■ 日産と読売クラブ日本リーグの最後の時代に覇権を争った日産自動車と読売クラブ。人気と実力を備えた両雄の戦いは、黄金カードとして広く知られていた。
1993年に開幕したJリーグの創成期は、当然のように、この2クラブが中心的存在だった。1993年と1994年に年間王者となったヴェルディ川崎に対して、横浜マリノスも1995年に悲願の年間王者に輝く。
時代は流れて2008年11月29日。42回目を迎えた元祖ナショナルダービーが開催された。過去の対戦成績は、横浜が21勝15敗5分けと優勢である。
■ 横浜開港150年に向けて・・・ペリー率いるアメリカ海軍が突如として姿を現したのが1853年の7月8日のことである。鎖国を続けていた当時の日本には、近代的なアメリカ軍に対抗すべき力はなかった。1854年3月31日に日米和親条約、1958年7月29日に日米修好通商条約が相次いで結ばれる。
その日米修好通商条約では、「治外法権を認めること。」、「関税自主権がないこと。」など、いくつかの不平等条約が結ばれたが、同時に、日本の5つの港を開港することも決定された。その5つとは、神奈川(横浜)・長崎・函館・新潟・兵庫(神戸)。横浜港が開港されたのは、翌1859年7月1日(旧暦:安政6年6月2日)。2009年中に開港150周年を迎える。
スペイン語で船乗りを意味する「マリノス (Marinos)」。横浜Fマリノスは、港町の横浜の象徴である。
#1 新横浜パフォーマンス (新横浜駅前)
■ 日産スタジアムへ日産スタジアムは1998年3月1日のダイナスティカップの日韓戦がこけら落としとなった日本最大のスタジアムである。収容人数は72327人で、総工費は約603億円。日韓ワールドカップで日本代表がロシア代表を1対0で破って、悲願の初勝利を挙げた思い出深い場所である。
#2 新横浜駅-日産スタジアムの道のり①
#3 新横浜駅-日産スタジアムの道のり② (中央の奥がスタジアム)
日産スタジアムは、JRの新横浜駅から徒歩で約15分。日本の交通の大動脈である東海道新幹線の主要駅から徒歩圏内の巨大スタジアムはここだけ。国際試合では多くの外国人観光サポーターを迎える必要があることを考えても、このスタジアムの利便性は高い。スタジアム周辺には、横浜アリーナやラーメン博物館もあって、かなりのにぎわいを見せる。
#4 新横浜駅-日産スタジアムの道のり③ (三角橋)
#5 新横浜駅-日産スタジアムの道のり④
#6 新横浜駅-日産スタジアムの道のり⑤
■ ホーム最終戦ホーム最終戦を迎える横浜Fマリノス。大混戦の残留争いの中、まだ残留は確定していないが、32節のジェフ千葉戦に3対0で勝利し、安全圏に入った。この試合ですんなりと残留を決めたいところである。
#7 トリコロール宣言
#8 スタジアムの外周
#9 スタジアムの正面
スタジアム周辺では、フリーマーケットが開催されていて、大勢の人が集まっていた。開催日は11月29日と11月30日の2日間。出店店舗は400にのぼる。
#10 スタジアム周辺① (フリーマーケットの様子)
#11 スタジアム周辺②
ワールドカップの決勝戦が行われたスタジアムとして名高い日産スタジアム。スタジアム内には、日韓大会のモニュメントがたくさん存在する。右はドイツ代表ゴールキーパーのオリバー・カーンの手形である。
#12 ワールドカップ記念
#13 マリノスの横断幕
#14 マリノスのゴール裏
#15 バックスタンドからの風景
■ 残留を懸けるヴェルディ気分的に余裕のある横浜Fマリノスに対して、東京ヴェルディはがけっぷち。32節終了時点で入替戦圏内の16位。ただ15位のジュビロ磐田とは同勝ち点。この試合に勝てば残留への道が大きく開ける。
#16 ヴェルディサポーター①
#17 ヴェルディサポーター②
#18 日産スタジアムのピッチ
これが噂の「トリコロール・ランサーズ」改め「トリコロール・マーメイド」である。2008年6月に改名を発表した「トリコロール・マーメイズ」が目標として掲げているのは、下の3つである。
(1) さらなる活躍の場をひろげていきます。
(2) より一層のエンターテイメント性を強めていきます。
(3) 港町横浜の海のイメージを大事にしていきます。
#19 トリコロール・ランサーズ
#20 ホームチームのゴール裏
■ 中澤が復帰したマリノスホームの横浜Fマリノスは<3-6-1>。GK榎本哲。DF栗原、松田、中澤。MF河合、小椋、田中隼、田中裕、兵藤、狩野。FW金。MF兵藤とFW金は32節のジェフ千葉戦でJ1初ゴールをマーク。
1トップのFW金は193cmの長身。そのFW金の下にMF兵藤とMF狩野が並ぶ布陣。3バックはDF栗原、DF松田、DF中澤。MF小椋とDF河合がダブルボランチ。
#21 日産スタジアムのピッチ
#22 マリノスイレブンの入場
横浜Fマリノスのチームカラーは「青・白・赤」のトリコロール(三色)。青は「冷静さと港町・横浜の海」、赤は「スポーツに触れ合う場をつくり、皆が誇れるクラブを目指すこと」、白は「皆に支えられ、息の長い活動を続ける、自立したクラブを目指すこと」を意味する。
#23 マリノス側の横断幕
#24 チームマスコット
■ 苦しいスターティングメンバー一方のアウェーの東京ヴェルディは<4-4-2>。GK土肥。DF福田、土屋、那須、和田。MF福西、菅原、柴崎、飯尾。FW平本、大黒。MFディエゴは4試合の出場停止中。FWレアンドロは再来日したばかりでコンディション不良。また、左サイドバックのDF服部が怪我で欠場と苦しい陣容。
#25 アウェー側のゴール裏
#26 試合前のアップ中
#27 ゴール裏
#28 両チームのスタメン
■ 残留決定試合は終始、横浜FMペースで進むが、東京Vも2トップの働きで決定機をつかむ。
前半7分過ぎに裏へ飛び出したFW平本が相手GKともつれて倒れるがノーファールの判定。さらに前半40分には右サイドのグラウンダーのクロスをニアサイドのFW平本がほぼフリーの状態で合わせるが、シュートは枠を外れる。結果的には、東京Vは、この2つのチャンスに得点できなかったことが響いた。
#29 ホームゴール裏のフラッグ
#30 復帰した中澤
0対0で迎えた後半13分。MF福西からボールを奪った横浜FMはDF松田がフィールド中央からゴールに突進。最後は、ループ気味の見事なミドルシュートを決めて横浜FMが先制に成功する。
これで試合の流れは完全に横浜FMに移った。MF狩野を中心に面白いようにパスが回り始めて、逆に東京Vは激しいプレスにほとんどボールを運べなくなる。
後半のロスタイムには途中出場のMF長谷川アーリアジャスールがパスカットから自らゴールを決めて2対0とリードを広げる。どうしても勝ち点「3」が欲しかった東京Vだが、これでジ・エンド。2対0で勝利した横浜FMが残留を決めた。
#31 歓喜のゴール裏
■ アグレッシブさを発揮したマリノス横浜Fマリノスは序盤はやや慎重なゲーム運びで、トップ下のMF狩野とMF兵藤が相手ディフェンスを個人技で崩しにかかるが思うように打開できず、孤立するケースも多かった。ただ、後半13分にDF松田のファインゴールで先制すると、その後の時間帯は劇的に試合内容が向上。厳しいディフェンスをベースに、ほとんど東京Vにチャンスを作らせなかった。
横浜Fマリノスのスタメンを見ると、実に11人中7人がセンターバックでプレーできる可能な選手である。もっというと、FW金、MF河合の2人はセンターバックが本職であり、今シーズン、MF小椋やMF田中裕の2人はセンターバックでプレーする機会が多かった。
それでも、守備的なポジションの選手が多いからと言って、そのチームのサッカーが守備的かというとそうともいえないのがサッカーの面白いところであり、守備力に自信のある選手が多いチームであるからこそ、攻撃時に、チーム全体が思い切って仕掛けることが出来る。守備的な選手が多いことが、攻撃面でも優れた循環を生んでいる。
■ 松田直樹というディフェンダー①決勝ゴールを奪ったのは横浜FMの3バックの中央を務めたDF松田直樹。彼らしい大胆なオーバーラップと思い切りのいいシュートがネットを揺らした。やや膠着しかけていた時間帯だっただけに千金のゴールだった。
それにしてもDF松田直樹という選手は不思議な選手である。サッカー選手としての才能はだれしもが認めるところであり、守備力はもちろん攻撃力も備える未来型のディフェンダーである。18歳で横浜マリノスに加入してすぐに3バックのストッパーのポジションを奪取。高卒ながら、DF井原正巳やDF小村徳男といった日本トップレベルのディフェンダーに引けを取らないプレーを見せて周囲を驚かせた。
その後、飛び級でアトランタ五輪に出場。FWロナウドやFWカヌーといった世界的なフォワードと十分に渡り合った。日本代表入りはすぐ目の前にあるかと思われた。
ただ、そのキャリアは、意外と遠回りすることになる。その要因となったのは、精神的な弱さにあったと言われる。本人の認めているように、飽きっぽいというか、すぐに現状に満足してしまう面があるようで、プレーにムラがあるという欠点は、ついにこの年齢になっても改善されなかった。
#32 ヒーローインタビュー
#33 試合後の挨拶
■ 松田直樹というディフェンダー②彼には、国際Aマッチ40試合の出場経験がある。日韓ワールドカップでは中心メンバーとしてベスト16に大貢献した。Jリーグのベストイレブンにも2度選出されていて、マリノスでも幾多のタイトルを獲得している。実績はトップクラスである。
それでも、もっと出来る選手なのではないか?という疑問はぬぐえない。おそらく、それは、普段、一番よく見ているマリノスのサポーターが強く感じていることだろう。
ただ、それが、彼の魅力の1つにもなっている。日本代表の中心でプレーするDF中澤佑二と比較すると対照的である。DF中澤は、いかにも優等生というタイプであり、プレーも、言動も、誠実な性格も、非の打ちようがない。一方、DF松田には、どことなく危うさが残る。31歳になっても、大人になりきれない印象を受ける。ただ、その危うさは、サポーターから愛される理由にもなる。31歳になってもなお、彼には、まだ、伸びシロがあるようにも感じる。
試合終了後のヒーローインタビューで、DF松田は生涯、マリノスでプレーしたいという意向を示した。若手の台頭が目立つ横浜FMだが、まだまだ、健在である。
#34 松田の言葉
■ 大島秀夫の退団華やかな影で、この試合の前日、FW大島秀夫が戦力外のため今シーズン限りでチームを離れることが確実となっていることが報道された。
FW大島は昨シーズン14ゴールで日本人トップスコアラーとなるなど、チームの核として活躍していた。今シーズンもここまで6ゴール。ただ怪我もあって、木村監督の構想からは外れる形となった。いまさらながら、サッカー選手は一年一年が勝負であり、厳しい世界であることを実感する。
そのFW大島はこの日もベンチ外。それでもチームへの貢献度の高さから、試合後のセレモニーでサポーターから大歓声を受けた。残されたリーグ戦は1試合のみであるが、天皇杯が残っている。FW大島のためにも・・・とチームは一致団結している。
#35 大島秀夫へ送る言葉
■ 新しいシーズンへ・・・33節で何とか残留を決めた横浜Fマリノス。木村監督の留任は確実視されており、来シーズンこそ、悲願のタイトル奪取しなければならない。ここ数年、期待を裏切ってきただけに、次のシーズンこその思いは大きい。
ただ、その前に忙しいオフを過ごすことになりそうである。シーズン途中にはDF中澤とMF山瀬功の2人にヴィッセル神戸移籍の噂が流れたこともあった。昨シーズンのチーム得点王のFW大島は退団が決定。新外国人選手の獲得の動きもあるだろう。
個人的に興味をひかれるのは、<3-6-1>を維持すると仮定して、1トップにどういう人材を持ってくるのかということである。適任と思われたFW大島は退団し、ターゲット・マンが不在となった。外国人枠に余裕があることを考えて、大物外国人ストライカー獲得の話が流れても不思議では無い。
#36 セレモニー終了後
■ 追い詰められるヴェルディ一方の東京Vは、前半に2度訪れたチャンスにゴールを奪えていれば展開は違ったはずだが、運を逃がす形となった。大黒柱のMFディエゴが出場停止で、純国産イレブンで戦わなくてはならない状態である。
幸いにして、ジュビロ磐田とジェフ千葉が敗れたため離されずに済んだが、34節は優勝の可能性を残す川崎Fが相手となる。対戦相手としては3チームの中で一番きびしい。主力の数名の戦力外通告が明らかになるなど、チームのムードは良いとは言えないが、最後までプロとしてひたむきな試合を見せなければならない。
#37 試合後①
#38 試合後②
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